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日光で出会った土産屋のおっちゃん②

つくばの進学塾「竹進」の英語・国語科の鈴木です。


「日光で出会った土産屋のおっちゃん①」の続きです


「じゃあ一本ください」と僕。
なぜか知らないけれど、 気づいたらそう言っていました。
「はいよ」とおっちゃん。


時速0.001メートルくらいのスピードでレジの向こうの 冷蔵庫へ向かい、
注文したサイダーのビンを一本取りだしました。
僕はおっちゃんに200円ちょうどを手渡し、栓を抜いてもらった サイダー
を受け取りました。


試しにその場で飲んでみると、それはいたって普通のサイダーの 味がしました。
僕は日光の水がどんな味かを知らないので、 そのローカル・サイダーを
飲んでも何もわからないのです。


日光の空と同じくらいどんよりした気持ちで店から出ようと したとき、
おっちゃんに呼び止められて、なぜか50円玉を 手渡されそうになりました。
「これは?」と僕が訊ねると、おっちゃんは「おつり」と 言いました。


たしかサイダーの値段は200円で、僕が渡したのも200円 だったから、
おつりは出ないはずです。 僕がそのことを言いつつ、レジの貼り紙を指さすと、
おっちゃんは目を押しつけるようにして貼り紙の文字を 読みはじめました。
どうやら自分でもすぐには解読できないようです。


それから3時間ほどかけて貼り紙を読んだあと、 おっちゃんは
唐突に笑いはじめました――「はっはっはっは」。
僕にはわけがわかりません。

「いやあ、全然売れないから値段をすっかり忘れちゃったよ」 とおっちゃん。
それからまた「はっはっは」と1人で大ウケ。


さっき売れるって言っていたのは何だったの?  とすこし憤りつつも、
このおっちゃんを責める気にはど うしてもなれず、
僕は仕方なくおっちゃんと一緒に 「はっはっは」と笑うことにしました。
それ以外に何をすればいいのか思いつけなかったのです。


それから意味不明な時間がしばらく続き、僕はおっちゃんに
別れを告げて店を出ました。

すこし歩いてから後ろを振り返ると、おっちゃんはまだ 店の前に立っていて、
雨の降りだしそうな空をぼんやりと 眺めていました。
僕のほうには一瞥もくれません。


ここで去りゆく僕に手を振ってでもしれくれたら、 この話もすこしは
心が温まるものになったのでしょうが、
おっちゃんは最後まで自分のキャラを崩しませんでした。


長々と書きましたが、今となっては本当にいい思い出です。
また日光に行く機会がありましたら、もう一度その土産屋に
立ち寄ってみようと思います。