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職員室だより
社長 渡部
2016.07.29

◯ポケモン深夜族

つくばの進学塾「竹進」国語担当の尾高です。

 

およそ十年前、つくばに引っ越してきたばかりの頃の話です。
大学院が夏休みに入って間もないある夜のこと、住まいが突然の停電に

見舞われました。
そのまま外に出てみると、街灯も家々の灯りもすべて落ちてしまって

真っ暗な中、不満や驚きを口にしながら、同じように飛び出して

きた人々がぞろぞろとわが家の前の細道をさまよっています。

 

学生向けのアパートがひしめいている一帯ですが、このように一斉に

大勢の人たちが外に出てくることは滅多にありません。

当然一人一人の顔は闇に隠されてしまっています。

たとえば、すぐかたわらにいる人と翌日の真昼に同じ道で偶然すれ違った

としても、一体誰なのかわからないでしょう。

 

とても近くで暮らしているにも関わらず、こういう風に集まる機会は

二度と訪れないであろう人たちの塊の中に、今、自分も紛れ込んで

しまっているのです。

そんな状況に不思議な胸の高鳴りをおぼえながら、私は人々の行き交う

物音にじっと聞き耳を立てていました。

 

こんなことを思い出したのも、「ポケ〇ンGO」のせいです。

 

週末の深夜、つくば駅のそばのペデストリアンデッキで自転車を漕いで

いると、スマートフォンを片手にゆらゆらとした足どりで、ポケ〇ンを

狩っているとおぼしき人たちにたくさん遭遇しました。
スマートフォンの灯りに照らされているとはいえ、一人一人の表情は

よく見えません。

ああ、あの停電の夜にそっくりだなあ、と懐かしさのような感情に

揺さぶられました。
停電というできごとの代わりに、今度はゲームでうっすらと繋がっている

人々の輪が、自分の前に広がっているのです。

 

帰宅してすぐに、自分のiPhoneに「ポケ〇ンGO」のアプリをダウンロード

したことは書くまでもないでしょう。